雨水の月

月明かりはモノクローム

彩度を失い、青白い光に照されて、陰影だけが輪郭を刻む夜の世界
雲の形が空に透けている
森の木々は黒く、草木はシルエットが浮かび上がる
虫の音が遠く響く
こちらも息をひそめて、香りをかぐ
どこかで嗅いだことのある香り、いい香り、密かな香り
夜の世界は、外の世界が、自分の中の世界に、より語りかけてくる、
そんな気がする

昼間とは違う世界
同じ場所なのに
同じものがそこにあるのに
別の顔
でも、誰も驚かない
夜は夜、昼は昼
こんなにも違うのに、同じものだと認識している